2015 年 9 月 9 日公開

Android のセキュリティに関する月例情報公開の一環として、Nexus 端末に対するセキュリティ アップデートを無線(OTA)アップデートで配信しました(ビルド LMY48M)。下記の問題に対する Nexus 端末のアップデートとソースコードのパッチは、Android オープンソース プロジェクト(AOSP)のソース レポジトリにもリリースされています。下記の問題のうち最も重大なのは、攻撃を受けた端末でリモートコードの実行が可能になる重大なセキュリティの脆弱性です。

Nexus ファームウェア イメージも Google デベロッパー サイト にリリースされています。LMY48M 以降のビルドで下記の問題に対処しています。パートナーには下記の問題について 2015 年 8 月 13 日までに通知済みです。

この新たに報告された問題によるユーザー端末の不正使用は検出されていません。例外は、既存の問題(CVE-2015-3636)です。 Android セキュリティ プラットフォームの保護 と SafetyNet のようなサービスの保護について詳しくは、 リスクの軽減 をご覧ください。こうした保護は、Android でセキュリティの脆弱性が悪用される可能性を減らします。

2 つの重要なセキュリティ アップデート(CVE-2015-3864 と CVE-2015-3686)の両方は、既に開示された脆弱性に対処します。今回のアップデートには新たに開示された重大なセキュリティの脆弱性はありません。ご利用の端末でこうしたアップデートを行うことをすべてのユーザーにおすすめします。

セキュリティの脆弱性の概要


下記の表に、セキュリティの脆弱性、共通脆弱性識別子(CVE)、およびその重大度の評価の一覧を示します。 重大度の評価 は、攻撃を受けた端末でその脆弱性が悪用された場合の影響に基づくもので、プラットフォームやサービスでのリスク軽減策が、開発目的や不正に回避されたために無効の場合を前提としています。

問題 CVE 重大度
メディアサーバーでのリモートコード実行の脆弱性 CVE-2015-3864 重大
カーネルでの権限昇格の脆弱性 CVE-2015-3636 重大
Binder での権限昇格の脆弱性 CVE-2015-3845
CVE-2015-1528
キーストアでの権限昇格の脆弱性 CVE-2015-3863
Region での権限昇格の脆弱性 CVE-2015-3849
SMS での権限昇格の脆弱性により通知の回避が可能になる CVE-2015-3858
Lockscreen での権限昇格の脆弱性 CVE-2015-3860
メディアサーバーでのサービスの拒否の脆弱性 CVE-2015-3861

リスクの軽減


ここでは、 Android セキュリティ プラットフォームの保護 と SafetyNet のようなサービスの保護によるリスクの軽減について概説します。こうした機能は、Android でセキュリティの脆弱性が悪用される可能性を減らします。

謝辞


調査に関与された下記の皆様のご協力に感謝いたします。

セキュリティの脆弱性の詳細


上記の セキュリティの脆弱性の概要 で一覧に挙げた各項目について、下記に詳細を説明します。問題と重大度の根拠について説明し、CVE、関連するバグ、重大度、影響を受けるバージョン、および報告日の表を掲載します。該当する場合は、バグ ID の欄に、その問題への対処を示す AOSP へのリンクがあります。複数の変更が同じバグに関係する場合は、バグ ID の後に続く番号で、追加の AOSP リファレンスへのリンクを示します。

メディアサーバーでのリモートコード実行の脆弱性

特別に細工したメディア ファイルやデータがメディアサーバーで処理される間に、攻撃者がメディアサーバーの脆弱性を悪用して、メモリ破壊やリモートコード実行を行うおそれがあります。

影響を受ける機能はオペレーティング システムの中核部分として提供されており、複数のアプリにおいて、リモート コンテンツ(特に MMS やブラウザでのメディアの再生)によってこの脆弱性が攻撃されるおそれがあります。

メディアサーバーのサービスでリモートコード実行が可能になるため、この問題は重大と判断されています。メディアサーバーのサービスは音声や動画のストリームにアクセスできる他、通常はサードパーティのアプリがアクセスできないような権限にアクセスできます。

この問題は既に報告されている CVE-2015-3824(ANDROID-20923261)と関連があります。最初のセキュリティ アップデートでは、最初に報告された問題の変形に対処できませんでした。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3864 ANDROID-23034759 重大 5.1 以下

カーネルでの権限昇格の脆弱性

Linux カーネルが ping ソケットを処理する際に権限昇格の脆弱性があり、悪意のあるアプリがそのカーネル内で勝手なコードを実行できるおそれがあります。

特権サービスでのコードの実行によってデバイスの保護を回避して、一部の端末では永久的な侵害につながる(システム パーティションの再消去が必要になる)おそれがあるため、この問題は重大と判断されています。

この問題は最初に 2015 年 5 月 1 日に公示されています。この脆弱性を不正使用して「ルート権限を取得する」ツールが複数あり、端末のファームウェアを変更するために端末の所有者が使用することがあります。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3636 ANDROID-20770158 重大 5.1 以下

Binder での権限昇格の脆弱性

Binder に権限昇格の脆弱性があり、悪意のあるアプリが別のアプリのプロセス中に勝手なコードを実行できるおそれがあります。

サードパーティのアプリがアクセスできない権限を悪意のあるアプリが取得できるため、この問題の重大度は「高」と判断されています。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3845 ANDROID-17312693 5.1 以下
CVE-2015-1528 ANDROID-19334482 [ 2 ] 5.1 以下

キーストアでの権限昇格の脆弱性

キーストアに権限昇格の脆弱性があり、キーストアのサービス中に悪意のあるアプリが勝手なコードを実行できるおそれがあります。ハードウェア式のキーも含めて、キーストアに含まれるキーが不正使用されるおそれがあります。

サードパーティのアプリがアクセスできない権限を取得できるため、この問題の重大度は「高」と判断されています。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3863 ANDROID-22802399 5.1 以下

Region での権限昇格の脆弱性

Region に権限昇格の脆弱性があり、サービスへの不正なメッセージを作成することで、そのサービス中に悪意のあるアプリが勝手なコードを実行できるおそれがあります。

サードパーティのアプリがアクセスできない権限を取得できるため、この問題の重大度は「高」と判断されています。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3849 ANDROID-20883006 [ 2 ] 5.1 以下

SMS での権限昇格の脆弱性により通知の回避が可能になる

Android が SMS メッセージを処理する方法に権限昇格の脆弱性があり、悪意のあるアプリが有料サービスの SMS 警告通知を回避する SMS メッセージを送信できるおそれがあります。

サードパーティのアプリがアクセスできない権限を取得できるため、この問題の重大度は「高」と判断されています。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3858 ANDROID-22314646 5.1 以下

Lockscreen での権限昇格の脆弱性

Lockscreen に権限昇格の脆弱性があり、悪意のあるユーザーがクラッシュさせてロック画面を回避できるおそれがあります。この問題は、Android 5.0 と 5.1 のみの脆弱性として分類されます。同様の方法で 4.4 のロック画面からシステムのユーザー インターフェースをクラッシュさせることができますが、ホーム画面にはアクセスできず、復旧には端末を再起動する必要があります。

端末に物理的にアクセスできる誰かが、端末の所有者の許可を得ずにサードパーティのアプリをインストールできるので、この問題の重大度は「中」と判断されています。この問題により、「危険度の高い」権限で通常は保護される連絡先のデータ、通話ログ、SMS メッセージなどのデータを攻撃者が表示することもできます。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3860 ANDROID-22214934 5.1 と 5.0

メディアサーバーでのサービスの拒否の脆弱性

メディアサーバーにサービスの拒否の脆弱性があり、ローカルな攻撃者が攻撃対象の端末へのアクセスを一時的にブロックできるおそれがあります。

この問題を悪用する悪意のあるアプリは、ユーザーがセーフモードで再起動して削除できるので、この問題の重大度は「低」と判断されています。ウェブや MMS を通じてリモートで不正なファイルをメディアサーバーに処理させるおそれもあります。この場合、メディアサーバーのプロセスはクラッシュしますが、端末は引き続き使用可能です。

CVE バグと AOSP リンク 重大度 影響のあるバージョン
CVE-2015-3861 ANDROID-21296336 5.1 以下